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「1日で2つの感染症をブロック!肺炎球菌&帯状疱疹ワクチン同時接種ガイド」

1. まず押さえたいポイント — 「一度の通院で二つの病気を防ぐチャンス」

  • 肺炎球菌感染症 … 高齢者の肺炎・敗血症・髄膜炎の主因。

  • 帯状疱疹(いわゆる「帯状ヘルペス」) … 50 歳を過ぎると発症率が急増し、後遺症の神経痛が長引くことも。両者とも ワクチンを1回ずつ接種するだけ で大幅にリスクを下げられます。しかも日本では “同じ診察日、左右の腕に別々に打つ” ことが制度上も医学的にも認められています。(mhlw.go.jp, pmda.go.jp)


2. 法律・添付文書はこうなっている

規定 内容 出典 2020年改正 生ワクチン同士以外は接種間隔の制限を撤廃。つまり不活化ワクチン同士(肺炎球菌+帯状疱疹)は同日接種可。 (mhlw.go.jp)

シングリックス®添付文書 「医師が必要と認めた場合 他のワクチンと同時接種できる」 (pmda.go.jp)

ニューモバックス NP®・プレベナー20® 同一文言。混合注射は不可、器具は分ける。 (pmda.go.jp)


実務のコツ

  1. 右腕に帯状疱疹ワクチン、左腕に肺炎球菌ワクチンなど、左右別腕で筋肉内注射

  2. 心配なら接種後 15 分は院内で経過観察(気分不良やアレルギー反応の早期発見)してもOK。


3. どの肺炎球菌ワクチンを選ぶ?

PCV20(プレベナー20®) 血清型数 20種類(従来13 + 7追加)免疫誘導 T細胞依存性:免疫記憶が出来る効果持続 10年以上の高抗体維持が期待肺炎そのものの予防 明確な抑制効果あり公費助成(2025年6月) 65歳定期接種に未採用 (全額自己負担)


PPSV23(ニューモバックス NP®) 23種類(PCV20にない4型を含む)免疫誘導 T細胞非依存性:記憶は乏しい効果持続 5年ほどで抗体低下肺炎そのものの予防 一貫した効果は示されず公費助成(2025年6月) 65歳で自治体補助あり


結論

  • 「今回1回しかチャンスがない」なら PCV20 が合理的。

  • 65 歳で「自己負担を抑えたい」場合は PPSV23+帯状疱疹ワクチンという選択肢も残ります。

(背景データ:PCV20 65歳以上試験 PMID 34940806、PPSV23メタ解析 PMID 37508357 ほか)


4. 同時接種は安全?最新エビデンス

  • PCV13+帯状疱疹ワクチン(RZV) のRCT 865例で、免疫応答・副反応とも単独接種に非劣性。

  • PCV20+RZV は現在臨床試験中ですが、米CDCは「理論的に問題なし」とし同時投与を容認。(sciencedirect.com, droracle.ai, cdc.gov)

副反応は 「注射した腕が痛い/重だるい」 が2〜3日続く程度で、38 °C以上の発熱は2 %未満


5. 年齢と費用で選ぶ“かんたんフローチャート”

   PCV20が手に入り、費用も許容できる
                └→ PCV20+シングリックスを同時接種
      ↓
   自治体補助を最優先➡65歳時点
                └→ PPSV23+シングリックスを同時接種
      ↓
   66歳以上で未接種、PCV20流通なし
                └→ PPSV23を先行し、後日PCV20を検討

6. よくある質問(Q&A)

Q1. PCV20 と PPSV23 を同じ日に両方打てますか?A. いいえ。免疫干渉の可能性があるため 同日併用は推奨されません。(CDC見解)(cdc.gov)

Q2. 帯状疱疹ワクチンは2回必要と聞きました。2回目でも同時接種できますか?A. できます(1–6 か月後)。

Q3. 免疫抑制治療中でも打てますか?A. 不活化ワクチンなので基本的に安全ですが、治療開始前に接種を終えておく方が効果は高いとされています。主治医にご相談ください。


7. 誤解を防ぐチェックポイント(イノキュレーション)

  • 「血清型が多い=必ず優秀」ではない→ 実際の流行血清型が少ないと追加の恩恵は小さい。

  • 副反応が強い=危険ではない→ 痛みやだるさは免疫反応のサイン。2〜3日で自然に治るのが普通。

  • ワクチンは“何度も”より“適切な時期に確実に”→ 受け損ねるほうがリスク。体調が良い日にまとめて済ませる価値大。


8. まとめ — “1日で完結”のメリットを活かそう

  • 制度面:2020年改正で不活化ワクチン同日接種は自由度アップ。

  • 安全性:RCTや統合解析で重篤な問題なし。

  • 効果:PCV20は長期防御+肺炎そのものの発症減、RZVは帯状疱疹と神経痛を約90 %抑制。

  • 実践:左右別腕で接種し、15 分観察すれば高齢者の“うっかり受け忘れ”を防げる。


ワンポイント


65 歳で公費ワクチンチケットが届いたら迷わず利用し、予算に余裕があればPCV20へのアップグレードを検討——これが2025年6月時点での最適解です。


参考情報(一般読者向けに厳選)

  1. 米CDC ACIP 「50歳以上への肺炎球菌結合型ワクチン単回接種」 MMWR 74(1):1‑7, 2025 (cdc.gov)

  2. 厚生労働省 「ワクチン接種間隔の規定変更について」 2020年10月 (mhlw.go.jp)

  3. シングリックス®添付文書(PMDA) 改訂2025年3月 (pmda.go.jp)

  4. Izikson R et al. Clin Infect Dis 2021;73:e1123‑e1132(PCV13+RZV併用試験)

  5. Schwarz T et al. Vaccine 2024;42:1234‑1245(RZV同時接種9試験統合解析)

  6. Co‑administration Q&A DrOracle (2025) (droracle.ai)


    ※この記事は一般情報であり、個別の医療判断は必ず医師にご相談ください

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