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子宮頸がんワクチン 〜最新の研究結果からHPVワクチンの効果と課題〜

執筆者の写真: たくや いわさきたくや いわさき

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんやその他の関連がんの主な原因です。HPVワクチンは、これらのがんを予防するための強力なツールですが、日本ではその接種率が低迷しています。本記事では、最新の研究結果に基づき、日本におけるHPVワクチン接種の現状と課題について詳しく解説します。


背景

 日本では、2010年にHPVワクチン接種が公的に推奨され始めました。しかし、2013年にワクチン接種後の副反応に関する報道が相次ぎ、政府は積極的な接種推奨を一時停止しました。これにより、接種率は急激に低下しました。2022年に再び推奨が再開されたものの、接種率の回復は遅々として進んでいません。


最新の研究結果

 2024年に発表された「Human Papillomavirus Vaccination by Birth Fiscal Year in Japan」という論文では、1994年度から2010年度生まれの女性の接種率が分析されました。結果は以下の通りです。


  • 1994年から1999年度生まれの接種世代の接種率は約72%。

  • 2000年から2003年度生まれのワクチン中断世代の接種率は約4.6%。

  • 2004年から2009年度生まれの個別情報提供世代の接種率は約16%。

  • 2010年度生まれのワクチン再開世代の接種率は約2.8%。


 これらの結果は、2028年度までに達成されると予測される接種率が43.16%と、WHOが目標とする90%を大きく下回ることを示しています。


課題と対策

 日本におけるHPVワクチン接種率が低迷している背景には、政府の政策変更やメディアの影響が大きいです。特に、2013年の接種推奨停止が与えた影響は深刻であり、未だにその影響が残っています。これを克服するためには、以下の対策が必要です。


  1. 広報活動の強化: HPVワクチンの安全性と有効性について、より積極的に情報発信を行う。

  2. 政策の改善: 接種対象を広げ、ワクチン接種の費用を公的に支援する。

  3. 地域差の解消: 地域ごとの接種率のばらつきを減らすための施策を講じる。

 

 HPVワクチンの普及は、将来的ながん予防にとって極めて重要です。日本でも接種率を上げるための努力が必要不可欠です。キャッチアップ接種の期間が迫っているので夏から接種を開始しましょう。だいたい半年くらい接種完了にかかるので、本当は男性も接種した方が良いと思いますが、日本は公費負担になっていません。


<参考>


 
 
 

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