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喘息治療の新常識?TSLPを狙う「テゼスパイア」で症状改善へ

喘息で毎日息苦しさや咳に悩まされている方、治療を続けても症状が十分に抑えられないと感じていませんか?実は喘息には、まだあまり知られていない「TSLP」という物質が深く関わっています。

この「TSLP」をターゲットにした画期的なお薬が、最近注目を浴びています。それが「テゼスパイア(一般名:テゼペルマブ)」という新しいタイプの分子標的薬です。

喘息の「根本的な原因」に直接作用し、他の治療薬ではコントロールが難しかった重症喘息患者さんにも効果が期待されています。一体どのような仕組みで喘息症状を改善するのでしょうか?

この記事では、重症喘息に悩む方に新しい希望を与える「テゼスパイア」の魅力や具体的な効果について、分かりやすく解説していきます。


◆ TSLPとは何か?

TSLP(胸腺間質性リンホポエチン)は、気道の上皮細胞などから分泌されるサイトカインで、アレルゲンやウイルス刺激により放出され、免疫反応の初期スイッチとして作用します。TSLPは、樹状細胞、ILC2、Th2、Th17、好酸球、好中球など多くの免疫細胞を活性化し、喘息の炎症を悪化させる原因となっています。


◆ テゼスパイアの作用機序 テゼスパイアは抗TSLP抗体で、TSLPがその受容体に結合するのを阻害します。これによりTSLP関連の炎症スイッチをシャットダウンし、2型炎症だけでなく、低2型炎症やステロイド抵抗性炎症にも効果が期待されています。


◆ 適応と使い方 日本では、重症または難治性の気管支喘息に対してテゼスパイアが保険適用されています。12歳以上の患者に対し、210mgを4週ごとに皮下注射します。自己注射にも対応しており、通院の負担軽減も期待されます。


◆ 期待される効果

  • 喘息増悪(発作)の抑制

  • 呼吸機能(1秒量)の改善

  • 気道過敏性の改善

  • QOLの改善

  • 気道粘膜の好酸球浸潤抑制

これらの効果は、血中好酸球数やFeNOといったマーカーに関わらず見られる点が大きな特徴です(ただし高値の方が効果は高い傾向)。

特にTSLPを標的とすることで、従来のマーカーに左右されにくい効果が期待され、より幅広い喘息患者さんに適応できる可能性があります。


◆ 注意点と副作用

  • 注射部位の痛みや頭痛、過敏症などの一般的副作用

  • 海外試験で心血管系イベント(冠動脈障害、不整脈など)の頻度がやや高いとされる報告もあり、投与中は経過観察が必要です。

  • 妊婦・授乳婦への投与は慎重に判断されます。


◆ まとめ テゼスパイアは、喘息の根本的な炎症メカニズムに関わるTSLPをブロックすることで、これまでの治療では難しかった重症喘息の症状を抑える新しい希望となる薬剤です。マーカー値にとらわれずに使用できる点、自己注射が可能な点も大きなメリットです。

喘息治療の選択肢が広がる中で、ご自身に合った最適な治療を選ぶことが、より快適な日常生活への第一歩になります。気になる方は、ぜひ呼吸器・アレルギーの専門医に相談してみてください。


※本記事は「アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き2025」に基づき一般読者向けに再構成したものです。医学的判断は必ず主治医とご相談ください。

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