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ベジファーストより“プロテインファースト”?

食前にプロテインを飲むと、食後の血糖値の上がり方がゆるやかになる

そんな話題が、最近また注目されています。

きっかけのひとつが、

妊娠糖尿病の妊婦さんが、朝食前にホエイプロテイン20gを飲んだら、朝食後の血糖値が下がった

という臨床研究です。





妊娠糖尿病の研究で分かったこと



研究の中身を整理すると、ポイントはこんな感じです。


• 対象:妊娠糖尿病と診断された妊婦さん


• 方法:


• 朝食30分前にホエイプロテイン20g入りドリンクを飲むグループ


• 見た目だけ似せた「味付きの水(プラセボ)」を飲むグループ


• 観察:妊娠後期を通して、食後血糖と血糖変動(ギザギザ)を詳細に測定


• 結果(プロテイングループ):


• 朝食後1時間の血糖値が約15〜20%低くなった


• 血糖変動(MAGE、標準偏差など)の一部も改善



つまり、



朝ごはんの前にホエイ20gを飲むだけで、


食後血糖の“山の高さ”を少し低くできた



という結果です。



「野菜から先に食べる“ベジファースト”」はすっかり定着しましたが、この結果を見ると



これからは“プロテインファースト”も選択肢になり得る



と言ってよさそうです。


もちろんこれは一つの研究であって、「これさえ飲めば妊娠糖尿病が治る」という話ではありません。





妊婦さん以外でも意味はある?



同じコンセプトの研究は、妊婦さん以外にもたくさんあります。


• 2型糖尿病の患者さん


• 肥満・メタボの方


• 完全に健康な成人



などを対象に、



食前にホエイプロテインを飲むと、食後血糖はどう変わるか?



を見た試験です。



共通しているのは、


• 食前にホエイプロテインを15〜30gとると


• 食後血糖のピークが下がり


• 血糖カーブがなだらかになりやすい


• 特に、もともと血糖コントロールが乱れがちな人で効果が出やすい



という点です。



一方で限界もはっきりしていて、


• 多くは「単回〜数週間」の短期試験


• HbA1cや合併症リスクなど、長期のゴールはまだ不明



という現状です。



そのため今のところは、



薬を置き換える“治療”というより


「食後高血糖を少しマイルドにする生活の工夫のひとつ」



くらいで捉えるのが、現実的なバランスだと思います。





なぜ血糖が上がりにくくなるのか?



キーワードは「インクレチン」と「ウォーミングアップ」です。



1. インクレチン+インスリンのウォーミングアップ



ホエイプロテインが腸に届くと、


• GLP-1・GIPといったインクレチン(腸から出るホルモン)が増え


• それに反応してインスリン分泌が、早めに・しっかり出る



ことが分かっています。



その結果、



ご飯を食べて血糖が上がり始めるころには、


すでにインスリン側がスタンバイ完了している



状態になり、食後血糖の“山”が小さくなります。



2. アミノ酸そのものがインスリンを促す



ホエイが分解されて出てくるアミノ酸(特に分岐鎖アミノ酸など)は、


• それ自体が膵臓を刺激してインスリン分泌を促す



働きがあります。



インクレチン(GLP-1など)


+ アミノ酸の直接作用


= インスリンの立ち上がりを前倒しする



というイメージです。



3. 胃から腸への流れをゆっくりにする



たんぱく質を先に入れておくと、


• 胃の内容物が小腸へ流れていくスピードが少し遅くなる



と考えられています。



同じ量の炭水化物でも、



一気にドーンと腸に届くのではなく、


じわじわ届く



ことで、血糖のピークがなだらかになる、という仕組みです。





満腹感のプラスアルファ



ホエイプロテインを食前に飲むと、


• 満腹ホルモン(CCK、PYYなど)が増え


• 空腹ホルモン(グレリン)が下がる



という報告もあり、「ややお腹が満たされる」人もいます。



ただし個人差が大きく、食事内容やタイミングにも左右されます。



「必ず空腹が消える魔法のドリンク」


ではなく、


「人によっては食べ過ぎ防止の手助けになるかも」



くらいの温度感が現実的です。





コンビニの「ザバス ミルクプロテイン」でも代用できる?



よく聞かれるのが、



「コンビニで売っているザバスのミルクプロテイン(200ml・たんぱく20g)でもいいの?」



という質問です。



結論としては、


• 1本でたんぱく20g


• 砂糖不使用タイプもある


• 常温保存できて、開けて飲むだけ



という点から、



「研究の“食前ホエイ20g”にかなり近い条件を、


日常生活で再現しやすい製品」



と言ってよいと思います。



厳密には、


• 研究ではホエイアイソレート(WPI)単独製品が多い


• ザバスの「ミルクプロテイン」はホエイ+カゼインの混合が多い



といった違いはありますが、



「食前にたんぱく20gを入れておく」



という大枠は同じです。



粉を水に溶かすのが面倒で続かない人には、最初から完成している紙パック・ボトル(RTD)の方が現実的かもしれません。





ウゴービ/ゼップバウンド治療の“入口”としての相性



ここからは、肥満症治療に関わる医師としての個人的な見解です。



日本でも、


• セマグルチド(ウゴービ)


• チルゼパチド(ゼップバウンド)



といった「GLP-1系・GIP系の肥満症治療薬」が登場し、大きな注目を集めています。


これらはまさに、


• インクレチン系(GLP-1など)を強力に刺激し


• 食欲を抑え、血糖や体重を下げる



薬です。



一方で、


• 効果が強いぶん、適応や副作用チェックが必須


• 費用も安くはない


• 生活習慣がそのままだと、中止後にリバウンドしやすい



という難しさもあります。



そこで私は、



ウゴービやゼップバウンドを使った肥満症治療の“入口”として、


まず「プロテインファースト」の生活習慣を身につける



のは、かなり相性が良いと考えています。



理由は3つです。


1. 同じ「インクレチン経路」を、まず自分の体で使ってみるステップになる


• いきなり強い薬に頼るのではなく、「インクレチンを自分の体でうまく使う工夫」を先に体験できる。


2. 食事の“質”が自然と整いやすい


• プロテインを先に入れることで、炭水化物と脂質だけに偏った食事から少し離れやすくなる。


• GLP-1製剤使用中も、筋肉量維持のためにたんぱく質摂取は重要です。


3. 薬をやめた後も残る“習慣”になる


• 薬はいつか減量・中止を検討しますが、「食前にたんぱく質を意識する」という行動は継続できます。


• リバウンドを防ぐ“行動の土台”としても意味があります。



もちろん、


• GLP-1製剤の開始・中止は、医師が総合的に判断すべきこと


• 腎機能や消化器症状、既往歴などから、プロテインファーストが向かない人もいる



ため、「全員に一律で勧める」ものではありません。



それでも、



「薬に頼る前にできること」


「薬と並走させると相性が良さそうな生活習慣」



として、プロテインファーストは一考の価値があると感じています。





実際に試すなら──シンプルなやり方



一般の方が自己管理の一環として試す場合、あくまで“生活の工夫”という前提で、次のステップが分かりやすいと思います。



1. こんな人に向きやすい


• 食後の血糖スパイクが気になる人


• 炭水化物中心の食事が続きがちな人


• 肥満症治療薬(ウゴービ/ゼップバウンドなど)を検討していて、生活習慣も整えたい人



2. やり方の例


• 朝食、または夕食の30分前に


• ザバス ミルクプロテイン(200ml・たんぱく20g)のようなドリンクを1本飲む


• そのうえで、いつも通りの食事をとる


• できれば主食(ごはん・パンなど)の量を、ほんの少しだけ減らしてみる



3. チェックしてみたいポイント


• 血糖自己測定ができる人は、


• 何もしない日の「食後1時間の血糖」


• プロテインを飲んだ日の「食後1時間の血糖」


を数日比べてみる


• 体重、空腹感、間食の回数なども簡単にメモしておくと、自分の体との相性が見えてきます。



4. やめておくべきケース


• 牛乳・乳たんぱくアレルギーがある人


• 重い腎臓病で、たんぱく制限が必要な人


• 糖尿病薬(特にインスリンやSU薬)で低血糖を起こしやすい人


• 妊娠中・授乳中の方は、必ず主治医に相談してから





まとめ


• 食前にホエイプロテインを飲むと、妊娠糖尿病だけでなく、2型糖尿病・メタボ・健康な成人でも、食後血糖の上がり方がマイルドになるという研究が多数あります。


• 仕組みは、


• インクレチンとインスリンの“ウォーミングアップ”


• アミノ酸によるインスリン分泌の促進


• 胃から腸への流れ(胃排出)をゆっくりにする


といった要素が組み合わさったものと考えられています。


• コンビニで買えるザバス ミルクプロテイン(200ml・たんぱく20g)は、研究条件にかなり近く、水に溶かす手間もないため、現実的な“プロテインファースト”の選択肢です。


• 私自身は、ウゴービやゼップバウンドといった肥満症治療薬の導入・併用の文脈でも、プロテインファーストは良い“入口”になり得ると考えています。薬の前後で「インクレチンを自分の体でうまく使う生活習慣」を整えておくことには、大きな意味があります。


• ただし、これはあくまで「生活の工夫」であり、薬を自己判断で増減してよいという話ではありません。持病のある方、妊娠中の方は、必ず主治医と相談しながら取り入れてください。


当院では、GLP-1治療とザバスをセット販売しております。ご希望の方は院長へご相談を!


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