ベジファーストより“プロテインファースト”?
- たくや いわさき
- 2025年12月1日
- 読了時間: 8分
食前にプロテインを飲むと、食後の血糖値の上がり方がゆるやかになる
そんな話題が、最近また注目されています。
きっかけのひとつが、
妊娠糖尿病の妊婦さんが、朝食前にホエイプロテイン20gを飲んだら、朝食後の血糖値が下がった
という臨床研究です。
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妊娠糖尿病の研究で分かったこと
研究の中身を整理すると、ポイントはこんな感じです。
• 対象:妊娠糖尿病と診断された妊婦さん
• 方法:
• 朝食30分前にホエイプロテイン20g入りドリンクを飲むグループ
• 見た目だけ似せた「味付きの水(プラセボ)」を飲むグループ
• 観察:妊娠後期を通して、食後血糖と血糖変動(ギザギザ)を詳細に測定
• 結果(プロテイングループ):
• 朝食後1時間の血糖値が約15〜20%低くなった
• 血糖変動(MAGE、標準偏差など)の一部も改善
つまり、
朝ごはんの前にホエイ20gを飲むだけで、
食後血糖の“山の高さ”を少し低くできた
という結果です。
「野菜から先に食べる“ベジファースト”」はすっかり定着しましたが、この結果を見ると
これからは“プロテインファースト”も選択肢になり得る
と言ってよさそうです。
もちろんこれは一つの研究であって、「これさえ飲めば妊娠糖尿病が治る」という話ではありません。
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妊婦さん以外でも意味はある?
同じコンセプトの研究は、妊婦さん以外にもたくさんあります。
• 2型糖尿病の患者さん
• 肥満・メタボの方
• 完全に健康な成人
などを対象に、
食前にホエイプロテインを飲むと、食後血糖はどう変わるか?
を見た試験です。
共通しているのは、
• 食前にホエイプロテインを15〜30gとると
• 食後血糖のピークが下がり
• 血糖カーブがなだらかになりやすい
• 特に、もともと血糖コントロールが乱れがちな人で効果が出やすい
という点です。
一方で限界もはっきりしていて、
• 多くは「単回〜数週間」の短期試験
• HbA1cや合併症リスクなど、長期のゴールはまだ不明
という現状です。
そのため今のところは、
薬を置き換える“治療”というより
「食後高血糖を少しマイルドにする生活の工夫のひとつ」
くらいで捉えるのが、現実的なバランスだと思います。
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なぜ血糖が上がりにくくなるのか?
キーワードは「インクレチン」と「ウォーミングアップ」です。
1. インクレチン+インスリンのウォーミングアップ
ホエイプロテインが腸に届くと、
• GLP-1・GIPといったインクレチン(腸から出るホルモン)が増え
• それに反応してインスリン分泌が、早めに・しっかり出る
ことが分かっています。
その結果、
ご飯を食べて血糖が上がり始めるころには、
すでにインスリン側がスタンバイ完了している
状態になり、食後血糖の“山”が小さくなります。
2. アミノ酸そのものがインスリンを促す
ホエイが分解されて出てくるアミノ酸(特に分岐鎖アミノ酸など)は、
• それ自体が膵臓を刺激してインスリン分泌を促す
働きがあります。
インクレチン(GLP-1など)
+ アミノ酸の直接作用
= インスリンの立ち上がりを前倒しする
というイメージです。
3. 胃から腸への流れをゆっくりにする
たんぱく質を先に入れておくと、
• 胃の内容物が小腸へ流れていくスピードが少し遅くなる
と考えられています。
同じ量の炭水化物でも、
一気にドーンと腸に届くのではなく、
じわじわ届く
ことで、血糖のピークがなだらかになる、という仕組みです。
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満腹感のプラスアルファ
ホエイプロテインを食前に飲むと、
• 満腹ホルモン(CCK、PYYなど)が増え
• 空腹ホルモン(グレリン)が下がる
という報告もあり、「ややお腹が満たされる」人もいます。
ただし個人差が大きく、食事内容やタイミングにも左右されます。
「必ず空腹が消える魔法のドリンク」
ではなく、
「人によっては食べ過ぎ防止の手助けになるかも」
くらいの温度感が現実的です。
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コンビニの「ザバス ミルクプロテイン」でも代用できる?
よく聞かれるのが、
「コンビニで売っているザバスのミルクプロテイン(200ml・たんぱく20g)でもいいの?」
という質問です。
結論としては、
• 1本でたんぱく20g
• 砂糖不使用タイプもある
• 常温保存できて、開けて飲むだけ
という点から、
「研究の“食前ホエイ20g”にかなり近い条件を、
日常生活で再現しやすい製品」
と言ってよいと思います。
厳密には、
• 研究ではホエイアイソレート(WPI)単独製品が多い
• ザバスの「ミルクプロテイン」はホエイ+カゼインの混合が多い
といった違いはありますが、
「食前にたんぱく20gを入れておく」
という大枠は同じです。
粉を水に溶かすのが面倒で続かない人には、最初から完成している紙パック・ボトル(RTD)の方が現実的かもしれません。
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ウゴービ/ゼップバウンド治療の“入口”としての相性
ここからは、肥満症治療に関わる医師としての個人的な見解です。
日本でも、
• セマグルチド(ウゴービ)
• チルゼパチド(ゼップバウンド)
といった「GLP-1系・GIP系の肥満症治療薬」が登場し、大きな注目を集めています。
これらはまさに、
• インクレチン系(GLP-1など)を強力に刺激し
• 食欲を抑え、血糖や体重を下げる
薬です。
一方で、
• 効果が強いぶん、適応や副作用チェックが必須
• 費用も安くはない
• 生活習慣がそのままだと、中止後にリバウンドしやすい
という難しさもあります。
そこで私は、
ウゴービやゼップバウンドを使った肥満症治療の“入口”として、
まず「プロテインファースト」の生活習慣を身につける
のは、かなり相性が良いと考えています。
理由は3つです。
1. 同じ「インクレチン経路」を、まず自分の体で使ってみるステップになる
• いきなり強い薬に頼るのではなく、「インクレチンを自分の体でうまく使う工夫」を先に体験できる。
2. 食事の“質”が自然と整いやすい
• プロテインを先に入れることで、炭水化物と脂質だけに偏った食事から少し離れやすくなる。
• GLP-1製剤使用中も、筋肉量維持のためにたんぱく質摂取は重要です。
3. 薬をやめた後も残る“習慣”になる
• 薬はいつか減量・中止を検討しますが、「食前にたんぱく質を意識する」という行動は継続できます。
• リバウンドを防ぐ“行動の土台”としても意味があります。
もちろん、
• GLP-1製剤の開始・中止は、医師が総合的に判断すべきこと
• 腎機能や消化器症状、既往歴などから、プロテインファーストが向かない人もいる
ため、「全員に一律で勧める」ものではありません。
それでも、
「薬に頼る前にできること」
「薬と並走させると相性が良さそうな生活習慣」
として、プロテインファーストは一考の価値があると感じています。
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実際に試すなら──シンプルなやり方
一般の方が自己管理の一環として試す場合、あくまで“生活の工夫”という前提で、次のステップが分かりやすいと思います。
1. こんな人に向きやすい
• 食後の血糖スパイクが気になる人
• 炭水化物中心の食事が続きがちな人
• 肥満症治療薬(ウゴービ/ゼップバウンドなど)を検討していて、生活習慣も整えたい人
2. やり方の例
• 朝食、または夕食の30分前に
• ザバス ミルクプロテイン(200ml・たんぱく20g)のようなドリンクを1本飲む
• そのうえで、いつも通りの食事をとる
• できれば主食(ごはん・パンなど)の量を、ほんの少しだけ減らしてみる
3. チェックしてみたいポイント
• 血糖自己測定ができる人は、
• 何もしない日の「食後1時間の血糖」
• プロテインを飲んだ日の「食後1時間の血糖」
を数日比べてみる
• 体重、空腹感、間食の回数なども簡単にメモしておくと、自分の体との相性が見えてきます。
4. やめておくべきケース
• 牛乳・乳たんぱくアレルギーがある人
• 重い腎臓病で、たんぱく制限が必要な人
• 糖尿病薬(特にインスリンやSU薬)で低血糖を起こしやすい人
• 妊娠中・授乳中の方は、必ず主治医に相談してから
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まとめ
• 食前にホエイプロテインを飲むと、妊娠糖尿病だけでなく、2型糖尿病・メタボ・健康な成人でも、食後血糖の上がり方がマイルドになるという研究が多数あります。
• 仕組みは、
• インクレチンとインスリンの“ウォーミングアップ”
• アミノ酸によるインスリン分泌の促進
• 胃から腸への流れ(胃排出)をゆっくりにする
といった要素が組み合わさったものと考えられています。
• コンビニで買えるザバス ミルクプロテイン(200ml・たんぱく20g)は、研究条件にかなり近く、水に溶かす手間もないため、現実的な“プロテインファースト”の選択肢です。
• 私自身は、ウゴービやゼップバウンドといった肥満症治療薬の導入・併用の文脈でも、プロテインファーストは良い“入口”になり得ると考えています。薬の前後で「インクレチンを自分の体でうまく使う生活習慣」を整えておくことには、大きな意味があります。
• ただし、これはあくまで「生活の工夫」であり、薬を自己判断で増減してよいという話ではありません。持病のある方、妊娠中の方は、必ず主治医と相談しながら取り入れてください。
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