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喘息治療の新時代:デュピルマブ(デュピクセント®)をわかりやすく解説

喘息は、通常の治療でコントロールしにくいこともあるやっかいな病気です。最近、デュピルマブ(デュピクセント®)という新しいタイプの薬が登場し、重症の喘息で悩む方に有効な治療法として注目されています。この記事では、デュピルマブの働き方や使い方、費用や副作用などを、できるだけわかりやすくご紹介します。


1. デュピルマブが喘息に効く理由

  • 好酸球がカギ喘息の中には、好酸球という白血球が気道の炎症に深く関わっているタイプがあります。好酸球が増えると、炎症が強くなり、症状が悪化しやすくなることがわかっています。

  • ポイントはIL-4とIL-13好酸球を含むアレルギー性の炎症(Th2型炎症)には、IL-4IL-13という物質が大きく関わっています。これらは同じ受容体(IL-4Rα)にくっつき、炎症をさらに増幅させます。

  • デュピルマブの働きデュピルマブは、このIL-4Rα受容体にくっつく抗体医薬です。IL-4とIL-13両方の働きを同時にブロックするため、気道の炎症を効率よく抑えることが期待できます。実際の臨床試験でも、発作が減り、呼吸機能が良くなったという結果が報告されています。


2. 投与方法(使い方)

  • 皮下注射で投与デュピルマブは、皮下注射(皮膚の下に打つ注射)で投与します。喘息の場合、最初に600mgを注射し、その後は2週間に1回、300mgずつ投与するのが原則です。

  • 自己注射も可能医師の判断と十分な指導を受ければ、自宅で自分で注射をすることも可能です。通院回数を減らすメリットがありますが、安全に注射するための事前トレーニングは欠かせません。


3. 費用と保険制度

  • 薬価の目安デュピルマブは高額な薬ですが、2024年4月1日時点の薬価は1本(300mg)あたり約58,000円です(将来的に変わる可能性があります)。

  • 高額療養費制度の活用日本の公的医療保険では、1ヶ月の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分が払い戻される「高額療養費制度」があります。

    • 事前申請のメリット: 「限度額適用認定証」を事前にもらっておけば、病院での支払いが上限までに抑えられます。

    • 所得による上限額の違い: 年齢や所得水準によって負担上限が変わります。

    • 世帯合算・多数回該当: 同じ世帯で複数の受診を合算できたり、年に何度も高額療養費制度を使うと負担上限が下がる場合があります。


4. 副作用と安全性

  • 主な副作用

    • 注射部位反応: 注射した部分が赤くなったり、腫れたり、かゆくなったりします。

    • 結膜炎(目の充血やかゆみ): 目薬などで対処できる場合がありますが、ひどい場合は眼科を受診しましょう。

    • 口唇ヘルペスなど

  • 重い副作用(まれだが注意)

    • アナフィラキシー: 息苦しさやじんましん、血圧低下などの重いアレルギー反応。

    • 好酸球増多症: 血液中の好酸球が異常に増える状態。

  • 注意点

    • 生ワクチンは避ける: 投与中は麻しん風しん、水痘など生ワクチンは基本的に接種できません。

    • 寄生虫感染: まれに寄生虫への抵抗力が下がる可能性があります。


5. 公的助成の対象になる?

  • 気管支喘息の場合現在のところ、気管支喘息は日本の「指定難病」には含まれていないため、デュピルマブの治療費を特別に助成する仕組みはありません。しかし、高額療養費制度などを利用して自己負担を抑えることが可能です。

  • 他の疾患アトピー性皮膚炎や好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)など、デュピルマブが使える病気の中には、指定難病として医療費助成の対象になる場合もあります(重症度などの条件あり)。


6. まとめ

デュピルマブ(デュピクセント®)は、喘息のうち特に好酸球性の炎症が強いタイプに対して、大きな期待が寄せられている新しい薬です。2週間に1回の皮下注射で、自己注射も選択可能。費用は高めですが、高額療養費制度を利用すれば自己負担額を大幅に抑えられます。

副作用には注意が必要ですが、比較的安全性が高いとされています。治療の詳細や費用の手続きなどは、必ず主治医や薬剤師に相談しながら進めてください。

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