熱中症予防は「水分補給だけ」では不十分|まず暑さから逃げる
- たくや いわさき
- 6 日前
- 読了時間: 7分
YouTube動画でも解説してます👇
熱中症予防というと、「水をたくさん飲む」「塩飴をなめる」と考える方が多いかもしれません。
しかし、水分を取っていても、強い日差しや高温多湿の場所で運動や作業を続ければ、体温は上昇します。
熱中症予防で最初に考えるべきことは、次の3つです。
1. 暑い環境を避ける
2. こまめに休み、体を冷やす
3. のどが渇く前に水分を取る
水分を後回しにするという意味ではありません。
まず涼しい環境を確保し、そのうえで休憩・冷却・水分補給を並行することが基本です。環境省も、熱中症警戒アラートが発表された際には、まずエアコンなどを使用した涼しい環境で過ごし、そのうえで休憩や水分・塩分補給を行うよう呼びかけています。
「涼しい場所」とはどこか
最も確実なのは、エアコンの効いた室内です。
自宅だけでなく、スーパー、コンビニ、図書館、公共施設、商業施設なども利用できます。
室内では、エアコン使用時の実際の室温を28℃前後以下に保つことが一つの目安です。
ただし、28℃は絶対的な安全基準ではありません。湿度、日当たり、部屋の構造、年齢、体調によって、快適に過ごせる温度は変わります。
汗が止まらない、体が熱い、寝苦しいと感じる場合は、設定温度をさらに下げてください。
重要なのは、エアコンの設定温度ではなく、人がいる場所の実際の室温です。設定温度を28℃にしても、室温が30℃になっていれば十分とはいえません。
日陰も直射日光を避ける点では有効ですが、風がなく湿度が高い場所では、十分に体温が下がらないことがあります。
日陰に移動しても暑さが続く場合は、できるだけ早く冷房のある場所へ移動してください。
WBGTで運動の危険度を確認する
暑さの危険度は、気温だけでなく、湿度や日差し、風などを反映した「暑さ指数・WBGT」で判断します。
WBGT 運動時の目安
21未満 原則として危険は小さいが、適宜水分補給
21以上25未満 積極的に水分補給
25以上28未満 積極的に休憩する
28以上31未満 激しい運動は中止する
31以上 運動は原則中止する
特に子ども、高齢者、肥満のある方、暑さに慣れていない方、睡眠不足や発熱、下痢などの体調不良がある方は、より早い段階で活動を減らす必要があります。
このWBGT区分は、主に運動や活動の危険度を判断するためのものです。
「WBGT25未満なら、休憩場所として必ず安全」という意味ではありません。休憩は、可能な限りエアコンの効いた場所で行いましょう。
日常生活では1日約1.2Lが一つの目安
普段の生活を送る成人では、食事に含まれる水分とは別に、飲料として1日約1.2Lが一つの目安とされています。
500mLのペットボトルなら約2本半、200mLのコップなら約6杯です。
一度にまとめて飲むのではなく、
* 起床時
* 午前中
* 昼食時
* 午後
* 夕食時
* 入浴前後や就寝前
などに分けて飲むと続けやすくなります。
通常の日常生活では、水や麦茶などで十分です。アルコールは尿量を増やすため、水分補給の代わりにはなりません。
ただし、1.2Lは全員に共通するノルマではありません。
体格、気温、運動量、発汗量によって必要量は変わります。心不全や腎臓病などで水分制限を受けている方は、主治医から指示された量を優先してください。
運動中は15~20分ごとに150~250mL
暑い環境で運動をする場合、日本スポーツ協会は次のような水分補給を示しています。
* 15~20分ごと
* 1回150~250mL程度
* 飲みやすい温度
* 電解質と糖質を含む飲料
1時間では、おおむね450~1,000mL程度に相当しますが、必要量には大きな個人差があります。
固定した量を無理に飲み続けるのではなく、気温、運動強度、体格、発汗量に合わせて調整します。
運動前後の体重で水分不足を確認する
発汗量を確認する簡単な方法が、運動前後の体重測定です。
運動による体重減少は、運動前の体重の2%以内に抑えることが目安です。
例えば、
* 体重50kgなら1kg以内
* 体重60kgなら1.2kg以内
* 体重80kgなら1.6kg以内
です。
これ以上減っている場合は、次回から活動時間を短くする、休憩を増やす、水分補給量を見直す必要があります。
普通に3食食べていれば、塩飴は原則不要
自宅、通勤、短時間の買い物、軽い家事などの日常生活では、普通に3食食べている人が塩飴やスポーツドリンクを常用する必要は通常ありません。
日本高血圧学会も、3食きちんと食べている人の多くは、食事から必要な塩分をすでに取っており、熱中症予防のために日常的に塩分を増やす必要はないとしています。
高血圧の方も、夏だからという理由で減塩を中止する必要はありません。
塩分を含む飲料が適するのは、次のような場面です。
* 炎天下でのスポーツや屋外作業
* 汗が流れ続ける
* 衣服や作業着がびしょ濡れになる
* 防具や厚い作業着を着用する
* 長時間にわたり運動や作業を繰り返す
* 食事を取れない状態で大量に汗をかく
必要性は「何時間活動したか」だけでは決まりません。
短時間でも大量に汗をかけば塩分が必要になることがあり、長時間でも発汗が少なければ水や麦茶で足りることがあります。
時間よりも、汗の量と活動内容で判断することが大切です。
大量発汗時は食塩相当量0.1~0.2g/100mL
運動や屋外作業で大量に汗をかく場合は、飲料100mL当たり、
食塩相当量0.1~0.2g
程度が一つの目安です。
500mLなら、食塩相当量約0.5~1.0gです。市販品では、成分表示の「食塩相当量」を確認してください。
塩飴だけでは水分を補えません。塩飴を利用する場合も、必ず水分と一緒に取ります。
水・スポーツドリンク・経口補水液の使い分け
飲み物 主な場面
水・麦茶 日常生活、室内、短時間の外出
スポーツドリンク 長時間の運動や屋外作業、大量発汗時
経口補水液 熱中症、嘔吐、下痢などで脱水状態が疑われる場合
経口補水液は、スポーツドリンクよりナトリウムやカリウムが多く、脱水時に水分と電解質を吸収しやすいよう調整された「病気の人向け」の飲料です。
健康な人が普段の水分補給として常用するものではありません。
熱中症で使用する場合は、パッケージに「熱中症による脱水状態」に使用できることが表示されている製品を選びます。高血圧、心不全、腎臓病、糖尿病がある方や、水分・塩分・糖質の制限を受けている方は、自己判断で大量に飲まないようにしてください。
頭痛や吐き気が出たら、まず活動を中止する
暑い場所で、頭痛、めまい、吐き気、強いだるさ、こむら返り、大量の発汗などが出た場合は、熱中症の可能性があります。
直ちに運動や作業を中止し、次の対応を取ります。
* エアコンの効いた場所へ移動する
* 衣服や防具を緩める
* 皮膚を水や濡れタオルで濡らし、扇風機やうちわで風を当てる
* 首、脇の下、足の付け根などを冷やす
* 意識がはっきりして安全に飲み込める場合に限り、水分や電解質を少しずつ取る
冷却と休憩を行っても症状が改善しない場合は、医療機関を受診してください。
この状態なら119番
次のような場合は、ためらわず119番通報します。
* 呼びかけへの返事がおかしい
* 意識がもうろうとしている
* けいれんがある
* 普段どおり歩けない
* 自力で水分を飲めない
* 症状が急速に悪化している
意識がおかしい人や、自力で飲めない人に無理に飲ませてはいけません。
救急車を待っている間も、涼しい場所への移動、衣服を緩める、全身を濡らして風を当てるなどの冷却を続けてください。
まとめ
熱中症予防は、水分補給だけでは不十分です。
まず暑さを避け、エアコンの効いた場所へ移動する。そこで休憩し、体を冷やしながら、こまめに水分を取ることが基本です。
普通に3食食べている人は、日常的な塩飴やスポーツドリンクは原則不要です。
一方、炎天下の運動や屋外作業で大量に汗をかく場合は、電解質を含む飲料を一時的に利用します。
暑さを避ける。休む。冷やす。飲む。
この4つを組み合わせて考えましょう。
参考情報
* 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」「熱中症予防情報サイト」(確認日:2026年7月26日)
* 公益財団法人日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック 第6版」2025年(確認日:2026年7月26日)
* 日本高血圧学会「減塩しながら酷暑を乗り切る!!熱中症を防ぐ6か条」2026年6月10日(確認日:2026年7月26日)
* 消費者庁「経口補水液について」(確認日:2026年7月26日)
* 厚生労働省「熱中症が疑われる人を見かけたら」(確認日:2026年7月26日)
コメント